無脊椎動物・節足動物の観察​②
甘エビの観察~ 新学習指導要領では2年から1年に移行

 解剖シリーズもそろそろ終わりが近づいてきました。手前味噌ですが、自分で開発した教材としては結構オススメにランクインします。個人的なこだわりとして、命を奪う生体の解剖はやらない方向で考えています。ただ、すでに市販されているもの(食品として)ならば、生徒の抵抗感も薄れると考えています。ましてそれが日々自分が食しているものなどであれば、なんとなく知ってはいたけど、深く知る事による新しい発見もあるのではないかと考えています。無脊椎動物の節足動物は我々のような脊椎動物とは、かなり体の構造も違うので見応えが充分かと思います。観察のポイントもたくさんあったので今回紹介させていただきます。

 自分で授業のプリントを作るために情報収集する中で、エビの解剖は大学等でも結構行われているようで、非常に詳細なスケッチや解剖図などがたくさん検索できました。授業の構成としては、体骨格や体の作り、足の作りなどに注目をさせ、本数やその形態を詳しくチェックすることと、体の内部構造(内臓)の観察です。使用したものは、大きなエビではなく、予算的にもお手頃な甘エビを使用しています。甘エビもスーパーできれいに並べられているものではなく、冷凍されたブロックものを解凍して使います。サイズにもよりますが1キロで2000円前後でした。5クラス190人程度の実施でしたが、2箱(2kg)で少し余裕がありました。もちろん1人1匹の実験です。冷凍でブロックになっているものの、かなり保存状態は良く、足や体の欠損の見られるものの割合はとても少なく感じます。水槽に水を張り、ブロックの甘エビをそのまま突っ込んでおけば簡単に解凍もできるので、事前の準備もいたって簡単にできます。

ただ1つ重大なポイントがあります。それは甲殻類アレルギーの生徒に対する配慮です。エビやカニのアレルギーはかなり強烈に反応が出るようですので、同じ空間内にいて、その本体そのものに触れるのはもちろんのこと、固体から出てくる匂いや、何らかの成分によって呼吸器や、皮膚に影響が出てしまうようです。最悪の場合アナフィラキシーショックで大変なことになることも想定されますので、事前に生徒のアレルギーチェックを行っておく必要があります。また、場合によってはこの授業をやらないということも生徒の安全のために考えなければならないと思っています。私は隣の部屋で、虫の模型やダンゴムシの模型、またはまたはスーパーで買ってきた特売品の小魚の解剖のどれかから選択するという形にして隔離しながら実施しました。過去に行った煮干しの観察やコオロギの観察、ホタテやイカの解剖についてもアレルギーを気にしなければならないようです。なかなか難しい時代になってきました。充分に気をつけて実験をやっていく必要があるのだと痛感しました。

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 授業展開はねらいを設定し、1人1匹の甘エビと両手にピンセット、そして解剖したものをきれいに並べていくシートと手順書(ワークシート)があれば準備完了です。解剖の手順については動画で見せることも考えましたが、時間の関係でカット。自分の持っている大きなエビのぬいぐるみ(メガイセエビで検索)を見せつつ、簡単な説明のみで作業に取り掛かることにしました。実験の手順はプリントにきちんと書いてあるので、生徒は自分で今何をするべきか、その作業は何のために行うかを考えながらやれる力をつけて欲しいなと思っています。

 本校には先細ピンセット、普通のピンセットがかなりの本数があったため、両手に1本ずつピンセットを持たせ、本物のドクターもしくはカニになったつもりで解剖をしなさいと伝えました。生徒は解剖道具を駆使しながらきちんと解剖に取り掛かります。生徒も少しをコツを掴むと、自分の指以上の働きをしてくれるこのピンセットに先人の科学者の工夫の跡を感じてくれていたように感じているのは私だけでしょうか…改めてピンセットの使いやすさとその構造美に感心します。

 まずはエビの足の本数を数えて貰いました。何となく見えている胸脚だけではなく、腹部の空の内側に隠れている腹肢についてもきちんと取り出し、数えるように指導をしました。見やすく広げた後にいつものようにスケッチ。観察のために行うスケッチの作業中に、いろいろな発見があったようで、気づいたことを書くスペースがこの時点でかなり埋まります。詳しく観察をできる子については、各足の長さの違いだけではなく先端部の構造の違い、ハサミの有無などについても発見することができます。ハサミは何のために使うのかと言う問いかけを忘れずにしましょう。生徒のイメージではカニがハサミを使ってものを食べているのは見たことや聞いたこと、もしくはただのイメージであるようですが、エビについては未知の存在のようです。オマールエビやロブスターのように大きなハサミを持つ種類であれば攻撃や防御など、男の子は男女問わずイメージできているようですが、甘エビのような小さいハサミを持つエビについては結構意外だったようです。海のお掃除屋さん(スカベンジャー)としての動画を見せればよかったなと思っています。生物のからだはその生活に即した非常に効率的な作りになっていることを見てもらいたいものです。

 脚を全部取り除くと、殻(胸部)の下のほうに口を見ることができます。頭の殻を外して内臓をみても良いのですが、口をピンセットで探り、そのままねじ込んで胃袋を取り出すことをやっている少年がいました。私はそれを見て「なるほど」と思い、次のクラスからは口を探させてピンセットを使って内臓をほじくり出すと言う作業に切り替えました。取り出した胃袋は赤色をしているものが多く、これは甘エビが食べた赤色のプランクトンであり、このプランクトンに含まれる色素が体に沈着していると言う話をしました。池?河?で養殖されているブラックタイガーやバナメイエビは黒い微生物を食べていること、湖に生息するフラミンゴの体表がピンク色なのは、赤色のプランクトンを大量に摂取しているからと言う話を聞いたことがあるのでそれを紹介しました。間違っていたらすみません。

 

頭部を分解するとエラーも見えます。これも水中の生物の特徴です。プリントの資料にもある通り、エビのからだのつくりは人間の背泳ぎのような形をしていますので、お腹側に神経が通っていて、消化器官は体の内側にあるようです。私は昔、母親の手伝いでえびの背わた抜きを日常的にやっていましたので、なんとなくわかっていますが、これが消化器官です。きちんと取らないと雑味が生じて料理が美味しくなくなるので徹底して取ることに集中していたことを今でも覚えています。。

 

ここまでくるといつも食べている甘エビの状態なので気持ち悪いと言う生徒はほとんどいません。ただし強烈なエビの香りが手に付いていますので、食器用洗剤の力を借りてての洗浄と消臭を行います。

 

私の解剖の時にも思いましたが、1人1時間で行うときの生徒の集中力はとても高く、本当に一生懸命目の前のものに集中し作業を行って思考を深めていました。今回のエビの解剖実験も、終わった後にとても楽しかったとか次のクラスの生徒に感想を熱く語っている生徒の姿もたくさん見え、充実した時間だったのではないかなと思います。

 

また次回やるときにプリントを改良したり、うまくいくように何らかの工夫をしたいと思います。皆さんのご意見やご感想、アドバイス等いただけたら嬉しく思います。(2019.10.3)