無脊椎動物・節足動物の観察
コオロギ・エビの観察~
新学習指導要領では2年から1年に移行

 無脊椎動物の観察のとっかかりとして前回行った昆虫、節足動物のフィギアのスケッチから1歩発展させます。実は私、中学校の理科の観察でハエを双眼実体顕微鏡で観察してスケッチをすると言う課題で虫が触れなくなりました。今から20数年前?のことでしたが、当時はザ・フライという人間とハエが合体しちゃった、さぁ大変と言う映画がヒットしていて、当時私はそれを金曜ロードショーか何かで見てしまい、その翌週あたりにこの観察を行ってしまいました。感受性の高い私にはこの授業は衝撃的過ぎて、顕微鏡のレンズの先にいるハエから「お前を溶かして食ってやるぞ!」的なことを言われているような気がして気分が悪くなってしまったことは今でも覚えています。恥ずかしながらそれから約20年ほど虫をほとんど触らない、視界に入れない生活が始まり、虫嫌いの理科教員としてごまかしごまかし仕事をする羽目になってしまいました。観察や探究活動については興味関心を引く事はもちろん理解をしているのですが、苦手や嫌悪感を助長するようなものにもなってしまうこともあるので色々と生物の観察については考えてしまいます。

 

 今回の観察で私が意識したポイントは、ある程度丈夫な個体であること。ゴキブリやムカデ・ハエのように見た目で嫌悪感を感じさせることのない一般的な昆虫。ある程度の大きさがあり、肉眼でも十分に観察できる個体。安価で手に入れやすい個体。それらのことを考慮した末にホームセンターやペットショップで生餌として売られているコオロギで観察することが望ましいと思います。1匹10円から30円ほどで手に入ります。まとめ買いをするとさらにお得で、大体50匹で1000円位であれば買いだと思います。コオロギの種類もヨーロッパイエコオロギ(通称イエコ)という少し茶色がかったものはゴキブリと違う感じですので、こちらの方が良いかと思います。フタホシコオロギは少し黒味がかっており、ちょっとゴキブリっぽいです。気性はこちらの方が荒いので相撲をさせるためにはこちらでやった方が良いと思います。大体ペットショップにはどちらか1種類しか置いてありませんので、入手入手しやすい方で充分かと思われます。

 

 また観察のために必要な道具も簡単に用意しましょう。初めてやった時は100円均一で買った小さな虫かごを各班に置いて観察をさせましたが、少し観にくいようです。またスペース的にも大きいようで小さかったり、理科室での保管場所についても重なりがあまり良くなかったりと一長一短でした。そこで最近はスーパーやホームセンターに売っているお惣菜の専用パックでやることにしています。蓋もきちんとついていて、コオロギが逃げ出す可能性が全くないので、生徒は安心して観察ができます。何より無色透明なので、360度様々な方向から覗いて観察することができ、持ち運びや収納も場所を取りません。私は観察や実験は出来る限り少人数で行った方が良いと思います。また、生物個体等を扱う場合については予算が許すのであれば1人1個体ある方が望ましいとも思っております。自分のペットを観察するような気持ちでコオロギを観察することができればいいのかなと思います。

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 観察の手順としてはいきなりからだの作りに注目させるのではなく、行動観察から始めるのがいいのかなと思います。できるだけ絶食させておいて、生徒に餌を食べさせる給餌体験が最も愛着が湧くようです。また名前もつけさせています。なんとなくの見た目で名前をつけなさいという課題を出します。そうすると行動の様子や仕草などからなんとなくオス・メスぽい名前を選んできます。後ほどオスやメスの見分け方について教えるのですが、合っていた場合には大喜びで間違っていてもドンマイ的な軽いノリでいいと思います。とにかくよく見るという観察の基本的なポイントを押さえた指導がしたいものです。スケッチについては動きがあるので少し難しいとは思いますが結構じっとしているものです。私は自分のトラウマ体験があるため顕微鏡でのスケッチさせません。逃げ腰かもしれませんが…ねらいをもって見てくれるだけでいいのです。

 外部からの情報を得るための触角の話、オス・メスの見分け方、鳴き方、求愛行動等について少しお話しをした後、1つの容器に2匹のこおろぎを入れるカップリングを行います。オス&メス、オス&オス、メス&メスでも全く問題はありません。それぞれに違った行動が出ると面白いですね。コオロギを擬人化しつつ自分事として観察をさせてみると子供らしい素敵な発想でいろんなことを感じてくれます。個人的にはオス同士が戦いを始める威嚇行動や戦闘モードを見ることができれば生徒も興奮や感動すると思います。意識も感情も何もなさそうなコオロギが、自分の感情をむき出しにして相手と戦う姿、ムシキングなどではなんとなく知っていても実際に目の当たりにすると驚きます。

 その昔、観音崎自然博物館の館長さんがコオロギ相撲で有名だったので無理やりお願いして講義を聞きに行きました。このページに掲載してある漫画のモデルとしても描かれています。中国では闘蟋(とうしつ)と言ってかなり古い時代から庶民に親しまれているようです。ぜひ検索をしてみてください。詳しい話は今度描きたいものです。


 

 この実験も不思議なもので相当嫌がっていた生徒もだんだんとこの雰囲気に慣れ、最後のほうになると自分のコオロギを愛おしく応援したりしていました。子供の適応力は本当にすばらしいと思います。

 私自身コオロギについては詳しく勉強しきれていませんが、改めて昆虫やその他の動物についてもっと知りたいと思わせてくれた大切な出会いだったと思います。人間だけが世界を支えていると錯覚しがちな今日この頃ですが、昆虫や脊椎動物、その他あらゆる生命体が相互に関連し合って今この瞬間があるのだと言うことを生徒たちが少しでも心に留めてくれるといいなと思いました。

 

 ちなみにコオロギのお世話はとても簡単です。基本的には水と少量の餌、排泄物の掃除などがうまくできるシステムを作ってしまえばかなり長く生きてくれます。秋の夜長に鳴くコオロギの声を聞きながら教材研究ができることもなんだか乙なものです。ぜひコオロギの観察を授業に取り入れてほしいと思います。